来年4月から賃金のデジタル払いが解禁となる見通しです。これまでは賃金が振り込まれた銀行口座などから現金を引き出して利用することが一般的でしたが、解禁後は(○○Payなどの)スマートフォン決済アプリの口座に直接賃金を入金することで、従業員はそのアプリにチャージする手間なく買い物ができるようになります。
賃金の支払方法については、労働基準法第24条により通貨(現金)払いが原則となっています。今でこそ当たり前の銀行口座への振込も法律上は例外にすぎず、今回のデジタル払いも同様に省令改正によるものとなります。従業員側のメリットは、現金をデジタルマネー化する手間が省けるというものですが、企業側のメリットとしては、振込手数料の削減や、日払いや週払いなど短期間での賃金支払いに対応しやすくなるといったことが挙げられます。また、銀行口座の開設が容易ではない外国人労働者への賃金支払いの手段としての活用も考えられています。
賃金のデジタル払いの議論は、2020年夏に厚生労働省の審議会で始まりましたが、審議は難航し、途中、議論を中断した時期もありました。銀行などに比べ、決済アプリの口座を運用する資金移動業者が破綻した場合の保全など、労働者保護の観点から課題があるとされたためです。
このため、資金移動業者の選定にあたっては、厚生労働大臣が一定の条件を満たす業者を指定することになりました。具体的には、口座残高は上限100万円とし、資金移動業者が破綻しても全額保証される仕組みを義務付け、月1回は無料で現金自動受払機(ATM)から1円単位で現金を引き出せるようにするといったことなどが条件になるようです。
いずれにしても、賃金のデジタル払いは、従業員の同意を得ることが前提です。同意を得る際は、銀行口座への支払いも併せて選択できるようにする必要があり、会社が経費削減の観点から、振込手数料の安い資金移動業者の利用を強制したりすることはできないことに十分留意する必要があります。