厚生労働省は、被用者保険のさらなる適用の拡大に向けた有識者懇談会を2月にスタートしました。すでに2016年10月から従業員数501人以上の企業を対象に、①週所定労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上、③勤務期間1年以上―――等を満たす労働者への適用がスタート。2022年10月からは勤務期間1年以上の要件を撤廃し、企業規模101人以上に拡大し、今年の10月には51人以上の企業にも適用されます。
厚労省の集計によると、国内の雇用者数5,700万人のうち、4,500万人が被用者保険に加入し、101人以上の適用拡大で90万人、51人以上で20万人が加入すると見込んでいますが、それでも残りの約1,000万人が未加入のままです。それを踏まえて政府の社会保障構築会議の報告書 (2022年12月)では、①短時間労働者の適用に関する企業規模要件の撤廃、②週労働時間20時間未満の労働者への適用拡大、③常時5人以上の個人事業所の適用対象外業種廃止および5人未満の事業所についても検討するよう提言しています。
それだけではありません。一つの事業所での労働時間の要件を満たさない複数の事業所に勤務するマルチワーカーへの適用拡大、そして働き方に中立な社会保障制度を確立するためにフリーランス・ギグワーカーなど非雇用の就労者に対する被用者保険の適用についても併せて検討することを求めています。これを受けて有識者懇談会では対象者の適用拡大に向けた議論を行う予定です。
懇親会は今後、業界団体等のヒアリングを踏まえて議論し、今年の秋には意見のとりまとめを行う予定です。
通例であれば、報告書をベースに厚労省の労働政策審議会で検討し、制度化・法案化の流れとなります。事業主にとっては、雇用者にとどまらず、すべての就労者を対象にした被用者保険の適用拡大を前提にした対応が求められることになりそうです。